ヨーロッパの規制状況:Brexit後の有資格者の要件を満たすための重要なアドバイスrequirements

April 05, 2022 by Harry Berlanga 4 分で読めます

カテゴリー | 治験関連サービス


COVID-19による混乱に加え、英国が欧州連合(EU)から離脱したことにより、欧州における治験サプライチェーンはさらに複雑化しました。2021年1月以降、EUと英国は異なる法規制のもとにあり、製剤を販売するときは各市場に適用される要件を満たさなければなりません。

英国がEUと締結している貿易協力協定では、製剤製造施設のGMP(製造管理・品質管理基準)査察は相互承認の対象となりますが、Qualified Person(QP)による出荷や製品バッチ試験については相互承認について規定されていません。一方、英国では、承認国、すなわち現時点では欧州経済領域(EEA)内の国で行われたバッチ試験及びQP認証は、受け入れ可能とされています。

2022年1月より、承認国から英国の治験実施医療機関に搬入されるすべての治験薬について、英国QPによる完全な監督が義務付けられます。これまでどおり、EEAでは、最終製品の各バッチについて、EEAにおける治験での使用や販売の前にQPによる認証が必要です。しかし、英国に拠点を置くQPは、今後、EEAで使用される治験薬バッチを認証することはできないため、英国のQPに業務を委託している企業は、EEAでの製品販売を継続するには、これまでのプロセスを大きく変更しなければなりません。

QPサービスの規制環境の変化がもたらす影響について解説した最近のオンラインセミナーでは、サーモフィッシャーのHarry Berlanga(Senior Director of Quality、EMEA)とAlessandro Barbato(原薬、製剤および無菌製剤QP)が、新ルールのもとでQP要件を満たし、サプライチェーンのリスクと治験への支障を最小限に抑えるためのキーポイントとして、以下のアドバイスを提供しています。

  • 治験申請資料に適切な情報を記載する: 申請資料にはQPによる出荷が行われる各拠点を記載しなければなりません。また、治験依頼者は、英国のQPが監督する拠点もすべて記載し、英国の製造許可を受ける必要があります。この作業は極めて重要です。申請資料は、QPによる出荷が行われる拠点を含むサプライチェーンを正確に反映していなければならないからです。この治験申請手続きを遵守していない治験薬の出荷は違法となります。
  • QPによる監督を確保したサプライチェーン戦略を構築する: 英国のQPによる監督を適切に実施するには、上述の申請資料の更新や文書での契約締結、プロセスの文書化などを含む、重要かつ正式なプロセスが必要です。英国のQPが監督する供給体制完成の期日は2022年1月1日ですので、このプロセスは最優先で進めなければなりません。
  • QPによる原薬・治験薬声明書: EU外で製造された治験薬について、QPは、当該治験薬のサプライチェーンがEUと同等の基準に準拠していることを確認した声明書を作成しなければなりません。この声明書は、製造/試験施設を監査し、適切な評価/管理を行った結果に基づいて作成する必要があります。解決すべき問題点が認められた場合に備え、根拠となる情報はできる限り早期に収集しなければなりません。
  • 品質/技術契約を見直す: サプライチェーンに変更が生じた場合には、品質/技術契約書を見直し、規制を遵守した業務が行われること、また、すべての製造、試験、出荷業務委託先と適切な契約が締結されていることを確保しなければなりません。その一環として、QP-to-QP(QP間)契約も改訂する必要があるかもしれません。
  • 新しい治験規制に備える: EUにおける治験の実施方法は、 Clinical Trials Regulation [EU] No 536/2014 の適用開始日である2022年1月31日より大きく変わります。変更点の1つが治験薬のラベリング方法であり、例えば、Clinical Trials Regulationのもとで実施される治験で使用されるすべての治験薬について、その直接容器には必ず使用期間/有効期限を記載しなければなりません。この要件により、ラベリング戦略の大幅な変更が必要となります。
  • 原薬の輸入要件を考慮してスケジュールを立てる: 一部の国では、原薬の輸入に関する規制上の制限から、追加試験の実施や許可の取得が必要となることがあるため、製造サプライチェーンの構築スケジュールや既存サプライチェーンのスケジュールで考慮する必要があります。
  • QPに常に最新情報を提供する: QPは、医薬品を治験での使用や市場での販売を目的として出荷する前に、各バッチを認証する法的責任を負っています。この責任を果たすには、製造業務に関する専門知識を備えているだけでなく、医薬品とサプライチェーンの安全性に影響を与える可能性のあるすべての要因を理解していなければなりません。したがって、QPは、製品の安全性および品質を確保するため、サプライチェーンに影響する可能性のあるあらゆる事項を把握している必要があります。特に、サプライチェーンに変更が生じた場合には、必ずQPに連絡しなければなりません。
Berlangaは、「欧州外に拠点を置く製薬企業は、欧州のGMP要件、そしてEUおよび英国のQPの役割と責任をしっかりと理解しなければなりません。そのためには、サプライチェーン品質契約およびQP-to-QP契約を見直し、常に最新の情報を反映しておくことが極めて重要です」と述べています。 

また、適切な医薬品受託製造開発機関(CDMO)との提携が重要であるとし、その条件として、各新薬候補・プロジェクトを理解できる技術的・科学的知識を備えていること、規制環境の変化に対応できる深い規制対応経験を蓄積していること、社内に英国およびEUに拠点を置くQPを有しており、両地域における製剤出荷とバッチ認証に対応でき、英国のEU離脱に伴う治験や販売に対するリスクを低減できることを挙げています。