「万が一の場合」を考慮した供給予測 治験実施において持続可能なサプライチェーンを構築すべき理由

ホワイトペーパー

従来、治験薬供給は治験計画立案段階の重要な要素ではなく、実施段階で考えるべき事項とみなされていました。しかし、バイオ医薬品業界においてよりスピーディーな新薬上市が求められる現在、供給予測は、戦略的かつ高度に複雑な成功要因としてますます重要視されるようになっています。供給に不足が生じると、治験開始の遅れや実施中の治験の中断に至る可能性があり、一方、治験薬の過剰供給もコスト面で大きな問題となります。最近の調査では、包装・出荷後に患者さんに実際に交付されない治験薬は3分の2にのぼることが報告されています。

一見単純な供給予測は、実は驚くほど複雑です。標準的な数式のみに基づいて必要供給量を予測すると、不確実要素が考慮されず、治験依頼者が失敗によるコスト増に対応できないような時期にサプライチェーンの乱れを引き起こしかねません。治験のボリューム、期間、幅、範囲は着実に拡大しており、それに伴って治験コストも上昇しています。また、特殊な取扱いを要するバイオ医薬品や、アルツハイマー病、糖尿病、癌など特に難しい疾患を対象とするバイオ医薬品の治験が急増しているなどの理由から、治験の複雑化も加速しています。 

このようにリスクの高い治験が増える中、サプライチェーンの問題はあらゆる手段を講じて回避しなければなりません。そのためには、モデリングのほか、さまざまな「万が一の場合」を考慮することが必要です。サプライチェーンを危険にさらす「万が一の場合」には、自然災害から対照薬または標準治療として使用する市販製剤の不足までさまざまな事態があります。

実効性の高い供給予測には、適切な意思決定により、既知の事項と未知の事項、リスクと予算、治験のニーズと患者さんのニーズのバランスを取ることが必要です。最終目標は、患者さんにスケジュール通りに的確に治験薬を届けること。これを実現できなければ、治験依頼者、治験責任医師、患者さん、そして社会全体が損失を被ります。本ホワイトペーパーでは、供給計画立案時に考慮すべき事項、治験の進行に伴って早期の決定がもたらす影響、患者さん、そして治験そのものをリスクにさらす決定について考察します。