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ウイルスベクターの医薬品受託製造開発機関(CDMO)に求められる資質はどのようなものでしょうか?急速に成長し、変化し続けているウイルスベクター市場では科学的専門知識、技術力、規制対応力が必要であることはもちろんですが、CDMOはどのようなアプローチでお客様とのパートナーシップに臨むべきでしょうか?
今週のブログでは、ウイルスベクターパートナーシップの構築・維持のエキスパートが、ウイルスベクター企業との信頼関係(ラポール)構築からウイルスベクターの開発・製造で起こりうる問題まで様々な側面を解説いたします。CDMOの選定や現在提携しているCDMOの再評価において、今回のインタビューがウイルスベクターCDMOとの健全なパートナーシップ維持に必要な基本要素を知るてがかりとなれば幸いです。
聞き手:Steveさん、こんにちは。今日はお越しいただきありがとうございます。お元気ですか?
Steve Grossman:元気です、ありがとうございます。お元気ですか?
聞き手: とても元気です。週末を楽しみにしています。では、まず、Steveさん自身について少しお伺いしたいと思います。経歴や現在の役職、ウイルスベクター業界に入った経緯などをお聞かせください。
Steve Grossman: はい。私は大小の企業で複雑なソリューション製品領域に携わってきました。実験装置メーカーのグローバルな専門販売・サポートから、希少疾病のプロジェクトマネジメント・研究、薬局ソフトウェア、製造ソフトウェア、サプライチェーンソフトウェアまでさまざまです。
そして、希少疾病に取り組む財団でボランティアとしてリーダーを務めていたプロジェクトを通してサーモフィッシャーサイエンティフィックで働くようになりました。サーモフィッシャーや別の財団のエキスパートと共同でiPSC(幹細胞)プロジェクトを進めていたのです。そこでサーモフィッシャーの素晴らしい研究スタッフと知り合い、幸運にもウイルスベクター部門で働く機会を与えられました。私のスキルセットにはぴったりの仕事で、希少疾病と一般的な病気の両方の領域に貢献できるようになったのです。
現在の役職はSenior Business Development Executiveです。お客様のプロジェクトの「クォーターバック」として、最初の問い合わせから、プロジェクトの立案(スコーピング)、提案、プロジェクトの最初のキックオフまで取りまとめる役目です。既存のお客様のほか、初期段階の企業やスタートアップ企業のお客様と仕事をしています。ウイルスベクターを用いた細胞治療・遺伝子治療の臨床開発から商用生産を目指すプロジェクトを推進しようとしているお客様です。
聞き手:いいお話ですね。希少疾病に取り組んでいる財団に関与していることは、他の希少疾病と戦っている企業にも貢献したいという意欲につながるにちがいありません。
Steve Grossman: そのとおりです。私は自分の仕事が大好きです。患者さんの人生を変えようとしている企業に貢献できることは素晴らしいです。
聞き手:患者さんへの思いは本当に大切ですね。ではお客様についてお聞きしたいと思います。ウイルスベクター業界で、当社との提携を検討中のお客様や現在提携しているお客様と仕事をするとき、アプローチの仕方はどのくらい重要ですか?そしてその理由を教えてください。
Steve Grossman: 打ち解けた関係を構築しつつ、科学に基づくプロジェクト活動を行うこと、そして明確な事業目標を共有することが重要です。状況把握のための最初の話し合いの場であっても、最後の作業指示書作成時であっても、何を達成できるのか、そしてそれをどのような共同作業で達成できるのかについて相互に合意しなければなりません。CDMOの選定プロセスであっても、目標の達成方法について両者が互いに納得し、理解することが必要です。相互の合意がクライアントとベンダーのパートナーシップ成功の鍵です。
聞き手:なるほど。つまり、そのような相互関係を構築するには、ベンダー側はよりコンサルタント的なアプローチをとらなければならないということでしょうか?
Steve Grossman: そのとおりです。コンサルタント的アプローチでは、単に話し合いに出席し、科学を無理やり押し付けることはできません。通常、当社チームが最初に聞く質問はシンプルです。
このような質問により、実際の状況について多くを知ることができるのです。その理想の姿は今すぐには達成できない場合もありますが、将来にはそれを目指して活動できるかもしれません。コンサルタント的アプローチは誠実かつ透明なものです。
クライアントに対して誠実であることは大きな意味を持ちます。お客様はベンダーがどのように接してくれたかを覚えていて、私たちベンダーにも誠実に接してくれるのです。ベンダーとしては、「わかりました。現時点ではお客様も私たちもこれをすることはできませんが、その代わりにこれを試してみてはどうでしょう?」というような回答をすることが大切です。
なぜなら ウイルスベクターサービス がお客様に提供できることは非常に多くあるからです。そして、現時点では実現不可能かもしれない数少ないことについての見通しを明確にするのも重要なことだからです。お客様の最善の利益のために尽力していることがわかっていただけたときに、当社の誠実さを真に理解していただけるのです。
聞き手:素晴らしいアプローチですね。お客様との信頼関係(ラポール)構築についてもう少しお聞かせください。健全で持続的なパートナーシップの土台となるのは信頼関係であると思いますが、どのように信頼関係を築いていますか?
Steve Grossman: ここぞというときには、適切なテーマを適切なタイミングで適切な人材が適切なレベルで取り組むことが必要です。簡単に聞こえるかもしれませんが、このような要素をすべて調整するのは容易ではないことが多いのです。ですが当社チームはこのような調整を非常に得意としています。特に、複雑な要素が多くあるウイルスベクターのプロジェクトではそうです。そしてやはり、最初から相互の理解と合意を構築しているのであれば、適切な人材を確保し、ソリューションを模索し、提供したいと思うでしょう。対象領域の科学のエキスパートやプロジェクトの立ち上げ・立案(スコーピング)に必要なスキルセットを持っている人など、適切な人材からなるチームを編成しなければなりません。そして契約締結が近づくと、当社チームとリーダーはシニアレベルの者が関与すべきタイミングを判断します。お客様には、このような当社の対応の速さ、意思決定プロセスのシンプル化・事務作業削減能力を高く評価していただいています。
聞き手:素晴らしいですね。では次にウイルスベクター業界全体について少し伺いたいと思います。成長し続けているウイルスベクター業界では、科学的な面からビジネス的な面までさまざまな問題にお客様は直面すると思います。あなたの経験では、特にスタートアップ企業はウイルスベクター領域でどのような問題にぶつかることが多いですか?
Steve Grossman: ご存知のとおり、情報処理技術はもちろん、科学と科学技術の進歩が加速していることはスタートアップ企業にとって対応が難しいでしょう。このような技術の進歩を利用し、外部委託によりバーチャル戦略・戦術を展開する効率的な事業計画を立てる新規バイオテクノロジー企業が増えています。幅広いツールと技術力を備えた当社のようなベンダーと提携することにより、お客様は真の基盤を構築したり、足りない部分を補ったりすることが可能です。
例えば、当社との提携を検討中のお客様は、ベクター製造プロジェクトで必要なことや高度な分析法の特性をどのように決定すればよいのかについて重要な要素を把握していない場合があります。そのようなとき、私たちは、お客様が事業目標・科学的目標に一致するものは何かを理解し、それをお客様の強みと弱みに結び付けることができるよう全力で支援します。お客様の強みをさらに強化すること、そして弱みを強みに変える方法を模索することによりプロジェクトを成功に導きたいと考えています。
一方、COVID-19のような混乱や細胞治療・遺伝子治療市場の急拡大が起きています。このような市場圧力により、スタートアップ企業ではスケジュール通りに作業を進めることが難しくなることがあります。スタートアップであっても、中堅・大手であってもバイオテクノロジー企業にとって生産能力は常に懸念材料です。また、去年1年間でウイルスベクター業界は大きく成長し、発展しました。
さらにスタートアップ企業は、その投資家ですらも、スケジュールの変化に気がついていないことがあります。サプライチェーンや第三者試験など、従来はかなり予測可能であった他の要素も、スケジュールやプロジェクトの進め方において大きな変動要因となることがあります。
規制対応のハードルについてみると、業界の発展に伴って、ウイルスベクター製造という新しいプロセスを取り巻く規制が不確実性をもたらすケースがあります。規制当局は、ウイルスベクターの上市について、その方針を周知し、製品承認プロセスを迅速化するために尽力していますが、規制変更時には申請経験と社内または委託先の専門知識が極めて重要です。
幸いにも、サーモフィッシャーのリーダーはあらゆるお客様を支援できるビジョンと姿勢を備えており、的確な投資を行っています。施設や技術力の拡充、最高の人材獲得などあらゆる面での投資です。高い科学力、事業推進力、規制対応力とベスト・イン・クラスの人材が集結することにより、最も困難な問題も解決できる能力を向上させることが可能です。
聞き手:興味深いお話ですね。細胞治療・遺伝子治療市場の成長によりウイルスベクター領域のイノベーションに対するニーズが高まっていることから、もう少し詳しくお伺いします。例えば、細胞治療・遺伝子治療市場への参入を目指し、 複雑なウイルスベクター製造プロセスについて支援を必要としているスタートアップ企業、あるいは大手製薬企業と仕事をしているとしましょう。ウイルスベクター製造パートナーとして、どのようなアドバイスをこの企業に提供しますか?
Steve Grossman: 必ずギャップ分析をすること、市場の現状と今後の動向を理解すること、そしてやはり、人材、科学、技術、生産能力ですね。自社の強みと独自の事業価値をしっかりと理解することにより、重要な領域でCDMOと提携し、事業目標を達成し、患者さんに貢献することが可能となります。
当社はウイルスベクター領域で幅広いサービスを提供できるよう懸命に努力しています。私たちが今できる素晴らしいこと、そしてこのような努力が実を結ぶことを考えると、チームメンバーは皆、今後の仕事にワクワクしています。私たちは「start here, stay here(エンド・ツー・エンドのサービス提供)」をモットーとしています。それは言葉だけのものではありません。私たちの活動の軸となるものであり、お客様の強みと課題を相互に理解できれば、お客様の役に立てるのです。
聞き手:素晴らしいですね。締めくくりの前に、お客様にどのように感じて欲しいと思っているかについて聞かせてください。お客様の気持ちの面で、どのようなことを心がけていますか?言い換えると、大切にされているとお客様に感じていただくためにどのような姿勢で臨んでいますか?
Steve Grossman: お客様がスタートアップ企業であっても、中堅・大手企業であっても、お客様に共感できることが非常に重要です。先ほど申し上げたとおり、私を含めウイルスベクターサービスチームのメンバーは皆、多くのお客様のようなスタートアップ企業にも、フォーチュン誌の上位100社に入るような企業にも勤務したことがあります。なので、チームメンバーの多くは同様の経歴を有しており、その結果、より中身の濃い、より率直な対話ができていると思います。何かの問題についてお客様に質問されたとき、私たちは多分、同じような問題を経験したことがあるわけです。さまざまな面で共感できることは非常に助けとなります。
聞き手:中堅・大手企業の技術力をスタートアップ企業の精神で提供するわけですね。
Steve Grossman: そのとおりです。
聞き手:Steveさん、今日は時間を割いていろいろお話しいただき本当にありがとうございました。お客様、当社との提携を検討中のお客様、そして私たちチームメンバーにもとても参考になるお話だったと思います。最後の質問になりますが、良いウイルスベクターパートナーの条件について何か付け加えたいことはありますか?
Steve Grossman: やはり、相互に理解することですね。この重要性はいくら強調してもし過ぎと言うことはありません。共通の目標、人材、科学、そして技術が鍵であることはもちろん、ベンダーとクライアントが継続的にしっかりと話し合い、定期的なコミュニケーションを維持することがプロジェクトの成功につながります。また、ベンダーとして、プロジェクトの両面を見る視点を持っていること、ベンダーとお客様の企業文化が一致していることも大切だと思います。最後に、究極的にはあらゆる活動は患者さんのためであるということを決して忘れてはなりません。患者さんへの貢献という究極の目標を考えれば、夜遅くの電話や、早朝のTeamsビデオ会議、難しい分析作業など私たちの仕事はすべて非常にやりがいのあることです。お客様とともにスマートかつ懸命に働くことにより、患者さんに大きな利益をもたらすことができるのです。
聞き手:Steveさん、ありがとうございました。本当に素晴らしいお話を聞くことができました。
Steve Grossman: こちらこそありがとうございました。またお役に立てることがあったらいつでも声をかけてください。
お客様を大切にしたサーモフィッシャーサイエンティフィックのサービスについてご紹介します。