mRNA医薬品開発成功のためのCDMOの選び方:CDMOに求められる5つの要素

6月 23, 2022 By Vincenza Pironti (1 minute read)

COVID-19パンデミック下において記録的なスピードでワクチンが開発・上市されたことから、mRNA技術が持つ大きな可能性が明らかとなりました。今回のパンデミック時に医薬品受託製造開発機関(CDMO)が重要な役割を果たしたことは、今後長期間にわたって製薬企業各社との関係に影響を及ぼすでしょう。パンデミック下でmRNAワクチンの開発・製造、そしてサプライチェーン・ロジスティクスの経験を積んだCDMOは、製薬企業パートナーに独自のメリットを提供することが可能です。CDMOは今回のパンデミックで得た教訓から、医薬品を開発し、患者さんに届けるという製薬企業各社の取り組みに対する最良な支援の仕方を学びました。


COVID-19のエンデミックへの移行に伴い必要とされるもの

パンデミック下ではCOVID-19ワクチン・治療薬の開発・製造が全世界で展開されたことから、CDMOのサービスに対する需要は急激に増加し、製薬企業各社との提携のあり方も進化しました。今後、パンデミック後の世界において最も有益な製薬企業とCDMOの提携には、次の5つの要素が必要であると考えられます。:

    1.   戦略的パートナーシップ, CDMOが持つ専門知識・技術と資源を最大限に活用し、製薬企業各社が対処しなければならないサプライチェーンおよび製造リスクを深く理解することにより、これらのギャップを埋めることができる差別化技術を構築することが可能です。その結果、パートナーシップモデルはさらに進化し、CDMOがより中心的な役割を担う新たな機会が生まれるでしょう
    2.   監査により検証された高い品質基準, スピードを優先するために品質を犠牲にすることは決してしない姿勢、妥協のない最高水準の品質へのこだわり、COVID-19ワクチンの製造実績を備えたCDMOは、製薬企業パートナーにビジネスアジリティを提供することが可能です。
    3.   需給変動への供給対応力, 需給変動への対応力を持つCDMOは、継続的に付加価値を提供し、市場の変化に柔軟に対応することが可能です。パンデミック前の製薬企業とCDMOの関係は多くの場合、取引におけるものでした。製薬企業各社は、生産能力の増強や新たな技術が必要な場合にCDMOと提携し、主に出来高払いやプロジェクト単位の委託契約によりサービスを受けていましたが、パンデミックによりこのような事業モデルは大きく変わりしました。
    4.   現地供給 パンデミック下では政府や非政府組織(NGO)がCOVID-19ワクチン・治療薬の開発・製造を支援するため、資金提供が行われました。今後CDMOは、自社の技術力、そして顧客の脆弱な部分を詳細に把握する必要があります。すなわち、起こりうるサプライチェーンの混乱や地政学的検討事項、市場競争を考慮したうえで生産能力・技術ニーズを評価しなければなりません。また、CDMOは、長期的な視野で生産能力計画を立てる必要があります。
    5.   幅広いサービス, 総合的なサービス(原料の供給から最終流通までなど)によりmRNAワクチン開発を円滑に進められるCDMOは、科学、製造、ロジスティクスに関する専門知識・技術を社内に備え、厳密なプロセス管理、緊密に連携する施設ネットワーク、高いレベルの品質管理による信頼性を製薬企業パートナーに提供することが可能です。

パンデミック下での課題解決

mRNAワクチンを実験室から臨床まで進めるには、複雑かつ変化し続けるさまざまな課題に対する独自のソリューションが必要となりました。パンデミック下では一刻も早い開発が求められた結果、ワクチンの製剤化、開発計画、サプライチェーン・ロジスティクスにかつてない迅速なイノベーションが生まれました。深い専門知識・技術とすぐに利用できる生産能力が必要とされたことから、実績あるサプライヤーネットワークと確立された施設により、迅速かつ円滑なスケールアップを実現しなければなりませんでした。

製薬企業各社は、mRNA製造技術、ヌクレオチドや酵素の原料供給、セルバンク作製、プラスミド製造、in vitro転写によるmRNA合成、脂質ナノ粒子封入、充填/最終包装、包装、輸送などエンド・ツー・エンドのサポートを提供できる戦略的CDMOパートナーと提携することにより、イノベーションを生み出すことができました。総合的なソリューションを提供できるCDMOは、科学、製造、ロジスティクスに関する専門知識・技術を社内に備え、厳密なプロセス管理、緊密に連携する施設ネットワーク、高いレベルの品質管理による信頼性を製薬企業パートナーに提供することができたのです

mRNAワクチン成功を導くキーポイント

TmRNAワクチンの開発・供給を成功させるには、製薬企業各社は以下の要素を備えたCDMOパートナーを見極めなければなりません。

  • mRNAワクチン開発に特有の特性を理解していること
  • 臨床ニーズの変化に対応できるよう、製造技術の柔軟性を重視していること
  • ワクチンのグローバルサプライチェーンに関するノウハウを備え、供給を確保できること
  • 新しい技術を取り入れ、将来の次のステップとしてデジタル化に対応できること
  • mRNAの開発・供給の各段階をシームレスに進めることができる総合的なソリューションを把握していること
    • 原料に関連する課題
      原料については、ヒト用医薬品の規制ガイドラインに基づく安全性と純度の確保が重要な課題です。感染症やウイルス性因子混入のリスク、アレルギー反応等の副作用のリスクを排除するため、動物由来物質やβラクタム系抗生物質が含まれていない原料を使用しなければなりません。原料の純度を確保するには、バイオバーデン試験およびエンドトキシン試験を実施するだけでなく、管理された環境下での作業、十分に確立された品質システム、幅広い品質管理試験が求められます。

      プロジェクト全体の成功には、適切な品質グレードの試薬を選択すること、各中間体の品質モニタリングのために適切な試験法を見極めること、そして脂質ナノ粒子製剤などの最適な処方を選択することが欠かせません。これにより、業界と世界各国の規制当局が要求するロット間の恒常性を確保することが可能です。

      このような課題を解決するため、サーモフィッシャーサイエンティフィックはmRNA製造のためのTheraPureおよびTheraPure Plusソリューションを構築しました。重要なプロセス、スケール、品質、規制ニーズに対応するため、さまざまな制限酵素、in vitro転写酵素、ヌクレオチド、キャッピング技術を駆使し、非臨床開発から上市までmRNAワクチン・治療薬の開発・製造の最速化を目指すソリューションです。これらの原料は、認証を受けた機関による監査を受け、十分に検証された品質システムを備えた施設においてGMPガイドラインに従って製造されます。

      過去1年間、しっかりとしたmRNAサプライチェーンがまだ確立されていなかったことはワクチン製造にとって重大な問題でした。業界は数千回分の製造から数十億回分の製造に移行するという、どんなシステムにとっても難しいスケールアップを求められたからです。大手業者はサプライヤーとともに鋭意努力し、脂質や酵素、精製用樹脂などの原料の製造・スケールアップに取り組んでいます。現在、チューブやフィルターなどのシンプルな部材を含め、供給はあらゆるワクチン製造法が抱える課題となっています。

      サーモフィッシャーでは、樹脂生産能力の迅速な拡充、既存施設の生産能力増強、新施設建築の加速化により総生産能力を倍増し、mRNAワクチン市場のお客様をサポートしています。2020年には、リトアニアのヴィリニュスに、工業規模のシングルユース技術製造施設を新設しました。mRNA合成に使用される試薬については、安定供給を確保し、各大陸の複数拠点から入手できるようにするため、米国の数施設において余剰製造を行っています。

      熟練人材に関する課題
      熟練人材の確保も課題の1つです。各ワクチンの開発、製造、試験には、高度な技術を備えた人材が必要です。製造、分析、製造科学技術(MST)、技術移管、化学・製造・品質管理(CMC)の迅速な構築に必要とされる十分な人材を確保することは非常に困難でした。製薬企業各社とのパートナーシップでは、原料開発、プロセス設備、分析、処方、治験、品質基準遵守相談の各領域のエキスパートを含む機能横断型チームを構築しなければなりません。

      DNA・プラスミド製造における技術・製造上の課題
      通常、大腸菌を用いる発酵法によるDNA・プラスミド製造では、生産能力が主なハードルでした。哺乳類細胞培養も行う設備での発酵工程は交叉汚染のリスクを伴うため、設備の専用化は特に問題です。プラスミド製造工程全体は単純で、まず発酵を行った後、回収/溶解/濃縮、精製、製剤化へと進みます。比較的小さいカラム(最大20 L)を備えた容量100 L未満の発酵槽が多くの場合用いられます。自社でプラスミド製造を実施できる管理されたクリーンスペースを保有しているお客様には、Gibco™発酵培地、シングルユース発酵槽、POROS™陰イオン交換/疎水性相互作用樹脂を提供しています。

    mRNAワクチン開発:進化と普及

    パンデミックが始まって以来、mRNA関連の臨床開発は、感染症ワクチンを中心に急速に展開し、現在200以上の企業主導治験が実施されています(図1および図2)。複数の後期臨床試験が進行中であり、このプラットフォーム技術の理解が進んでいます。しかし、何億回もの投与が行われたにもかかわらず、mRNA技術はまだ初期段階にあり、計218の候補化合物のうち75%(164個)はまだ非臨床段階にあります。SARS-CoV-2に対するmRNA技術の臨床経験とバリデーションのほぼすべてが、モデルナ社とビオンテック社が創製したワクチン2剤によるものです。現在臨床段階にあるmRNAプロジェクトは主に感染症と癌を対象としており、治療薬よりもワクチンに重点が置かれています。


    図1:現在実施中のmRNA医薬品の企業主導治験(治療領域別)
    出典:Trialtrove(2022年5月)


    図2:mRNA医薬品の企業主導治験(開始年別)
    出典:Trialtrove(2022年5月)

    現在行われているmRNAプラットフォーム開発活動が示すとおり、第一世代製品は期待を上回る成果を収めました。mRNAプラットフォームは、従来型技術に比べ、パンデミック時の対応力、開発のスピード・成功率の高さ、競争力のある臨床プロファイル、優れた製造スケールアップ性、抗原配列の急速な変化への適応力において明らかに優っていたのです。

    mRNAをベースとする開発の加速化には共同作業が必要であり、2013年に遡るR&D提携が技術開発を推進させました。COVID-19に関連する技術進歩がきっかけとなって、共同R&D活動が盛んとなり、幅広い提携が最近の製造・販売パートナーシップにつながっています。このような投資は、将来、非パンデミック時の機会創出や次世代プラットフォームの改良にとって有益なレガシーとなるでしょう。

    このような提携活動を推進する重要な要素の1つがワクチン・治療薬候補が持つ商業的可能性であることは明らかです。かつてない莫大な収益が長期的なプラットフォーム技術への投資を後押しし、COVID-19ワクチンは史上最高の利益をあげる製品の1つとなると予想されています。各国政府は、初期ワクチン接種プログラムおよびエンデミック期のブースター接種を実施するうえでmRNA技術が望ましいとの見解を示しており、このような販売機会は今後も持続するでしょう。

    今後の開発活動により競争力の問題が克服され、非パンデミック下での競争力が高まる可能性があります。例えば、多価次世代ワクチン、凍結乾燥製剤による耐熱性の向上、自己増幅型mRNAによる有効用量やブースター接種の削減、COVID-19後の余剰製造設備などが挙げられます。

    今後も大きな可能性を持つこの技術は、パンデミック下のワクチン開発の成功を土台とし、さまざまな新たな機会を生み出すでしょう。mRNAプラットフォームとその製造技術の進歩には数多くのパートナーシップが必要でした。その結果、mRNAが持つ大きな商業的可能性が引き出され、記録的な収益をあげることが可能となりました。このような投資は、将来、非パンデミック時の機会創出や次世代プラットフォームの改良に有益なレガシーとなるでしょう。mRNA技術は、COVID-19以外にも次のような領域で期待されています。

    • 他の感染症に対するワクチン
    • インフルエンザ/ヘルペス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、呼吸器疾患、複合抗原、将来の公衆衛生危機など
    • 非ワクチン治療薬
    • タンパク質補充療法、タンパク質医薬品のin vivo生産、免疫修飾剤/免疫補助剤など
    • がんワクチン
    • 個別化ネオ抗原ワクチン、分子標的ワクチンなど

    パンデミックによる原料不足や輸送の混乱の中で経験を積んだCDMOは、合理化された次世代mRNAワクチン・治療薬の開発・製造を牽引できる力を備えています。

    参考文献

    1 https://www.patheon.com/resource-library/whitepapers/mrna-vaccine-development-key-insights-for-planning-workflow-and-supply-chain-success/
    2 https://www.thermofisher.com/us/en/home/industrial/pharma-biopharma/nucleic-acid-therapeutic-development-solutions/mrna-therapeutic-resources/mrna-synthesis-reagents.html
    3 https://www.thermofisher.com/us/en/home/brands/gibco.html
    4 https://www.thermofisher.com/us/en/home/life-science/bioproduction/single-use-bioprocessing/single-use-equipment/single-use-fermentor.html
    Vincenza Pironti

    Vincenza Pironti, PhD

    Sr. Staff Scientist, R&D

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