Author:
Anil Kane, PhD, MBA
主なポイント
初期段階から製造堅牢性を考慮した設計
開発段階で重要品質特性(CQA)とスケール可能な管理戦略を明確に定義し、技術移管やバリデーションにおいて一貫性を確保する。
予測・デジタルツールの活用
インシリコモデリング、シミュレーション、実験計画法(DoE)を活用し、製品性能を事前に予測するとともに、後期開発における意思決定を効率化する。
技術とプロセス戦略の最適なバランス
製品の複雑性や商業目標に合わせて、造粒方法や製造形態(バッチ製造/連続生産)など、最適な製造プラットフォームを選定する。
ばらつきの管理とリスク低減
原材料、キャリブレーション、封じ込め手法を標準化することで、特に高薬理活性原薬(HPAPI)における再バリデーション遅延やコンプライアンスリスクを回避する。
パートナーシップによる開発レジリエンスの強化
グローバルなインフラ、規制対応力、統合された技術ケイパビリティを有するCDMOと連携し、スケールアップから商業化までを円滑に推進する。
初期開発で複数用量における安全性と有効性が確認された有望な化合物でも、それだけで成功が保証されるわけではありません。製剤開発において本当の正念場となるのが、後期開発から商業化に向けたスケールアップの段階です。このフェーズでは、研究段階で得られた知見を、実際の製造現場で再現できるかどうかが問われます。
後期開発では、製剤設計の複雑化、プロセス条件のばらつき、そして規制要件への対応が同時に発生します。課題は「作れるか」ではなく、「商業規模でも、品質規格を確実に満たしながら、安定して同じ製品を作り続けられるか」という点にあります。スケールアップの設計や管理が不十分な場合、製造遅延、手戻り試験、バッチ不良、さらにはコンプライアンス上のリスクにつながる可能性があります。そのため、後期開発では製造を見据えた実践的な製剤・プロセス戦略が不可欠です。
自信をもってスケールアップを進めるためには、技術的な専門性とオペレーション戦略を適切に整合させ、各ステップにおいて柔軟性、先見性、そして確実な実行力を備えることが不可欠です。適切な計画と実行があれば、他で停滞や失速が起こりがちな後期開発のスケールアップも、確信をもって推進することが可能となります。
後期開発の成功は、製造適性を考慮した設計と、重要品質特性(CQA)をスケール可能な管理戦略に確実に組み込むことから始まります。技術移管は単なる文書の受け渡しではなく、「製品の意図」を正確に翻訳するプロセスとして機能することが重要です。すなわち、開発データ、分析手法、そして暗黙知としてのプロセスノウハウを製品とともに移行させることで、性能の一貫性を維持し、バリデーションをより迅速に進めることが可能となります。
多くの組織では、プラットフォームとしての開発経験や適格化された設備ラインを活用することで、大きな優位性を得ています。これらは開発期間の短縮、結果の安定化、ならびに規制当局からの信頼性向上に寄与します。さらに、インシリコモデリング、スケールアップシミュレーション、実験計画法(DoE)といった予測ツールを活用することで、より早期の段階から、より確かな根拠に基づく意思決定が可能となります。例えば、ロールコンパクションのシミュレーションにより、本格的なスケール試験に先立って、設備適合性やプロセス挙動を把握することができます。このアプローチは、時間や原材料の節約に加え、製品開発を頓挫させかねない課題を早期に特定し、影響を最小限に抑えることにつながります。
後期開発を成功させるためには、将来の商業生産を見据えたうえで、実行しやすい技術を選ぶことが重要です。
造粒方法の選定
湿式造粒か乾式造粒かは、製剤特性や将来の製造規模を考慮し、フェーズⅡまでに決定しておくことが望まれます。早期に方針を固めることで、後工程での再検討や再バリデーションによる手戻りを防ぐことができます。
バッチ製造と連続生産の使い分け
バッチ製造は変更管理がしやすく、需要変動にも柔軟に対応できます。一方、連続生産はプロセスの安定性を高め、ばらつきを抑えながら、より効率的な製造を可能にします。
分析技術の活用
プロセス分析技術(PAT)を用いることで、製造中の品質をリアルタイムで把握でき、プロセス理解が深まります。これにより、商業規模の製造においても、安定した品質と規制要件への確実な対応が可能になります。
後期開発では、ひとつの判断ミスが単独で終わることはほとんどありません。スケジュール遅延、再バリデーション、査察での指摘、上市の遅れといった問題が連鎖的に発生し、リソースを圧迫しながらプロジェクト全体への信頼性を低下させてしまいます。
こうしたリスクを抑えている開発プログラムでは、プロセス設計、バリデーション戦略、管理体系を早い段階から整合させ、規制要件とのすり合わせを事前に行うことを重視しています。早期の規制対応を前提とした設計と計画が、後期開発における安定したスケールアップの鍵となります
高薬理活性原薬(HPAPI)を扱う場合、単一の対策ではなく、多層的なリスク管理が前提となります。ハード面での封じ込め設備やクローズド搬送による一次封じ込めに加え、施設全体の圧力管理や環境制御、さらにアクセス管理、文書管理、作業者の健康モニタリングといった運用面での管理を組み合わせて対応します。
また、品質を維持しながらスケールアップを進めるためには、プロセス開発、分析、技術移管を分断せず、多職種が連携して一つのシステムとして機能させることが重要です。過去の知見やデータに基づく予測ツールを活用することで、不具合を事前に想定・回避し、どの範囲までプロセスやサプライチェーンのばらつきを許容できるかを、コンプライアンスや品質を損なうことなく判断することが可能になります。
リスクを見越した堅牢なプロセス設計により、不確実性の高い後期開発フェーズであっても、予測可能で安定した実行へとつなげることができます。
適切なCDMOパートナーは、後期開発で顕在化しやすい複雑な課題を事前に見据え、開発の流れを止めることなく解決することで、戦略を安定した実行力へとつなげます。製剤開発において信頼できるパートナーは、次のような点で大きな価値を提供します。
製剤・プロセス・分析にわたる技術力
製剤設計、プロセスエンジニアリング、分析科学に精通していることで、問題の兆候を早期に捉え、手戻りや遅延に発展する前に、的確な対策を講じることができます。
グローバルな製造インフラ
サイト間移管や将来的な拡張にも柔軟に対応でき、原材料、プロセス、ドキュメントを管理下でスムーズに移行することが可能です。これにより、品質と一貫性を維持したまま開発・製造を継続できます。
規制要件への深い理解
製品特性に応じたグローバル規制要件を正確に把握し、リスク評価およびリスク低減策を含めた開発戦略を構築できます。
確かな規制対応実績
設計、バリデーション、管理戦略を早期から規制視点で整合させることで、査察リスクを最小化し、スケールアップ時の想定外を防ぎます。
HPAPIに対応した封じ込め設備と安全文化
高薬理活性原薬(HPAPI)に対する専用設備と安全を重視した運用により、リスク要因を予測可能なプロセスへと転換します。
商業化までのすべてのステップを見据え、確実に対応できるCDMOを選定することが、後期開発成功の重要なポイントとなります。
後期開発における経口固形製剤(OSD)のスケールアップは大きな課題となり得ますが、事前の備えによって乗り越えることが可能です。適切な戦略、確立された技術移管、そしてレジリエンスを重視した協業モデルを構築することで、後期開発のスケールアップから商業化準備までを、自信をもって進めることができます。