医薬品開発を加速するパートナーシップの力:最新研究からの注目ポイント

January 09, 2025 (15 minute read)

包括的な開発・製造・研究・臨床供給を単一ベンダーで

臨床試験の開始を加速し、開発コストを大幅に削減する統合型アプローチ
タフツ大学医薬品開発研究センター(Tufts Center for the Study of Drug Development)が発表した最新の研究によると、医薬品の開発・製造・研究・臨床供給までを単一ベンダーに一括して委託することで、臨床試験開始の加速と開発コストの大幅削減が可能になることが示されました。

がん領域プログラムにおける統合サービスモデルの影響を分析した本研究では、臨床各フェーズの期間短縮とコスト効率の向上が明確に確認されています。

タフツ大学経済分析部門ディレクターで研究准教授のJoseph A. DiMasi博士は、Thermo Fisher Scientific主催ウェビナー「Maximizing Value Across Drug Development: Embracing a New CDMO and CRO Partnership Approach」に登壇し、同社のBrenda Bruker(統合供給・デリバリーサービス担当エグゼクティブディレクター)、Brittany Hall(統合オファリングおよびプロジェクトマネジメントCoPディレクター)とともに、従来分断されていたプロセスを一つのパートナーシップに統合することによる実務的なメリットを解説しました。

このアプローチは、Thermo Fisherが新たに立ち上げたAccelerator™ Drug Developmentに具現化されており、研究開発から製造、臨床領域まで、各プログラムの特性に合わせたソリューションを提供します。単一ベンダーによる包括的サポートは、ワークフローの効率化、リスク低減、開発の継続性確保を可能にし、上市までの道のりを加速します。

モデル化による統合効果の可視化

統合型CDMO・CROアプローチの効果を定量化するため、タフツ大学チームは期待正味現在価値(eNPV)モデリングを活用しました。これは、コスト・リスク・将来収益を加味して投資の将来価値を算出する手法であり、開発戦略の財務的妥当性を評価する上で有効です。

DiMasi博士は「eNPVモデリングは、スピードと品質の両立を重視する戦略の評価に重要な視点を提供します。今回のデータでは、統合型の枠組みがROIの向上と業務効率化を確実に実現できることが示されました」と説明。分析の結果、単一プロバイダーへの統合により財務成果が大幅に改善され、一部のがん領域プログラムでは最大4,400万ドルの付加価値が生まれたといいます。

「医薬品開発において時間は金です」と博士は強調。各フェーズの期間短縮や非効率の最小化はコスト削減だけでなく、上市までの期間短縮による収益最大化にも直結します。

実例が示す統合アプローチの効果

多くの製薬企業が抱える課題の一つは、複数ベンダー間の連携に伴う遅延やコミュニケーションロスです。
DiMasi博士は「統合された単一ベンダーアプローチは、こうした課題を軽減するだけでなく、より迅速かつスマートな開発を可能にします」と述べています。

Thermo FisherのBrenda Brukerは「この手法は効率的であるだけでなく、開発の各フェーズを能動的に連携させ、管理上のギャップを減らし、潜在的な課題への先手対応を可能にします」と説明しました。

例えば、あるバイオテック企業はアッセイの変動性と規制上の課題により、最大18か月の遅延が予想されていましたが、Thermo FisherのAccelerator Drug Developmentを活用し、アッセイ条件の見直しや試験仕様の改訂、プロセスの効率化を迅速に実施。その結果、100万ドル以上を節約し、First-in-Human試験を1年早めることに成功しました。

また、450以上の治験施設を含む大規模オンコロジー試験を進めていた大手製薬企業では、Accelerator Drug Developmentによりプロジェクトマネジメントと臨床オペレーションを統合。治験施設の開設を予定より前倒しし、管理業務を35%削減しました。Brittany Hallは「チームをつなぎ、コミュニケーションを円滑にすることで、品質を維持しながらタイトなスケジュールを守ることができました」と語っています。

Watch the on-demand webinar Maximizing Value Across Drug Development: Embracing a New CDMO and CRO Partnership Approach to see how Accelerator Drug Development can streamline your journey and help bring your innovation to market faster.

これらの事例は、医薬品開発の複雑さを乗り越える上で、包括的かつ統合されたソリューションがいかに革新的な力を発揮するかを示しています。タフツ大学の研究が示すように、このモデルは、製薬企業(スポンサー)が最も差し迫った課題に取り組む方法そのものを再定義します。

「医薬品開発における財務的・業務的なプレッシャーが高まる中で、プロセスの効率化はもはや“有益”であるにとどまらず、“必須”になりつつあります」とDiMasi博士は述べています。非効率の解消、リスクの低減、市場投入までの道筋の予測可能性向上を通じて、このアプローチはタイムラインを加速し、患者に命を救う治療を届けるための強力な手段となります。